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1998年月大阪教育大学体育学修士論文
精神的側面からみたスポーツ適性
−男子バドミントン競技におけるシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの違いについて−

簡単解説] [人柄10類型

 本研究は、バドミントン競技における第一線級の日本リーグ1部所属選手を対象に、シングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの違いを心理的側面からとらえ、精神的適性条件を明らかにすることを目的とした。その結果、以下の3点が明らかになった。

 @男子バドミントン選手は分裂型が多く、精神的健康水準が高いこと。
 Aダブルスに比べてシングルスの上位群は適応力と柔軟性に富んでいること。
 B意識特徴に差が認められ、シングルスの選手はダブルスの選手に比べ主観性が強く、楽天的であること。

 日本国内におけるトップレベルを対象としたバドミントン選手の特徴は以上の通りである。健康な精神に裏づけされた適応の良さと柔軟性をもち、我の強さとのんきを兼ね備えたシングルス選手、同様に高能率・高健康を示しながらパートナーシップに依存して意志発動の遅さが顕著なダブルス選手の特徴が明らかになった。
 世界的水準にあるバドミントン選手は、シングルスとダブルスをかけもつことはない。そこでは、シングルスとダブルスは違うものであり、より専門的に競技力向上をはかる努力が行われている。しかし、日本ではシングルスが強ければダブルスもできるといった考え方が強く、それぞれの独自性を考えに入れていない。日本の男子バドミントンが世界に羽ばたくためにはシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの精神的特徴の違いを認識するとともに、世界の第一線級選手のデータから解を求める必要がある。世界のデータと比較することによりシングルスとダブルスの精神的側面からみた適性が浮き彫りにされてくるであろう。そのためには、さらなるデータの蓄積が必要であり、精神的適性条件を世界に求める研究が急務となろう。


キーワード:バドミントン,U-K法,Y-G法

T 緒言
 
 現在の日本でバドミントンは、レクリエーションとして多くの人々に親しまれ、生涯スポーツの一つとして認められてきている。しかし、競技としてのバドミントンは、複雑で多様なテクニックと強度の全身持久力を必要とし、高度なかけひきや戦略が求められるスポーツである。1992年バルセロナオリンピックで正式種目として採用され、一時脚光を浴びたものの、大きな反響はなく相変わらずマイナースポーツであることに変わりはない。このような現状の中でバドミントン競技を広めるには、オリンピックなどの国際舞台で活躍できる選手の出現は不可欠なものである。それでは日本の選手が世界の舞台で好成績をあげるためにはどのような適性条件が必要であろうか。
 精神的要因が運動技術の向上や試合の勝ち負けに大きく関わるという研究には、小林を中心とする内田クレペリン精神検査法と、矢田部ギルフォード性格検査法の使用頻度が高く、優秀選手の発掘やコンディショニングに大きな成果を上げるようになった。とくに、スポーツの分野では、特定のスポーツで高度の技能水準に達したものについて、その特徴を分析して適性を類推する一種の帰納的方法が行われてきた。これらの研究によって好成績を残した選手達について証明された法則性は

@スポーツ種目間差異を超越してトップアスリートの精神的健康水準が高いこと
Aスポーツ種目やポジション別に一定のパーソナリティ傾向がみられること

があげられる。これらはデータの蓄積とともに、競技適応に関する法則性が統計的思考のもとで確認される段階にきている。バドミントン競技について適性の視点から客観的検証を試みたものに梁田、高田、岡森がいる。彼らにより、日本を代表する選手は、競技への打ち込み姿勢、試合勘の鋭さ、粘り強く努力することの3点において高い水準にあること。敏感な反応と堅実に粘り抜く強さを兼ね備え、精神的に安定し、柔軟で凝り性な選手が競技水準上位群に多いこと。以上の結果が報告されている。
 バドミントン競技にはシングルスとダブルスが存在する。今の日本では二冠・三冠と、いくつかの種目で同時に優勝することを至上とする風潮があり、両方できることがすばらしい選手となる。しかし、世界はその流れとは異なる方向へ進んでいる。世界の一流選手は、シングルスとダブルスをかけもつことはない。これは、バドミントン競技においてシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーが存在しその適性条件が異なることを意味しているのではないだろうか。
 そこで本研究では、バドミントン競技のトップレベルにある日本リーグ1部所属選手を対象にシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの違いを心理的側面からとらえ、精神的適性条件を明らかにすることを目的とする。


U.研究方法

1)検査対象

 スポーツ適性研究を考える上で、トップアスリートを対象にすることは不可欠である。そこで、日本実業団バドミントン連盟に籍を置く、日本代表選手を含む平成10年度日本リーグ1部所属選手を中心とした60名と岡森が検査した過去の一流選手4名を合わせた64名の男子選手を対象にした。


2)検査期間

1996年9月〜12月及び1998年9月〜11月 
1985年8月〜11月 全日本総合大会優勝者4名
日本リーグが始まる1〜2ヶ月前の、検査に支障をきたさない心身状態時に実施した。

3)検査内容
 1)U−K法(クレペリン):図1のような試験用紙を用い、人柄10類型と精神健康度5段階判定を行い、平均曲線および後期増加率を算出する。平均曲線の作図にあたっては、曲線経過を比較・分析しやすくするために作業量をそのまま示すデータと前期一行目を全体の平均値に合わせた修正曲線を作成した。出現率の推定には、カイ自乗検定と臨界比及びt-検定を用いた。
図1.クレペリン試験紙
時間内にランダムな数字を足して、
1桁のみを記入し、その曲線をみる

  2)Y-G法(矢田部・ギルフォート):各尺度の粗点から、A〜Eの5類型判定を行った後プロフィールを作成した。全ての12尺度得点平均と標準偏差を算出し、意識水準差の確認にはt-検定を用いた。
 検定結果は有意水準5%以下(一部10%を含む)を取り上げた。


V.結果・考察

1.全選手の一般的特徴(年齢・最終学歴・身長・体重)

 表1は、全選手の年齢別最終学歴分布を表したものである。日本リーグ1部所属選手は大学出身者が多い中でも、関東学生リーグに所属する大学出身者が中心である。年齢別には主に20歳代の選手で構成されているが、平均年齢が26.4歳と高いのは、バドミントンが体力だけではなく技術的・戦術的に長けて精神的にも強くなくては勝てないスポーツであり、それらを身につけるにはある程度の年期が必要だからと考えられる。
 表2は、全選手の身長別体重分布を表したものである。平均身長は173.84cm(SD=5.602)・平均体重66.97kg(SD=6.172)、で 日本男子の平均身長が27歳で171.3cm、67.0kgであるから、身長は若干高く、体重は全国平均と同等の値を示した。

年齢\学歴 関東 関西 高卒 計(%) 身長\体重 55〜60 55〜60 55〜60 55〜60 55〜60 計(%)
32〜35 1 1 1 3(5.0) 186〜188 2 2(3.3)
29〜31 6 5 2 13(21.7) 186〜188 1 3 2 6(10.0)
26〜28 16 3 19(31.7) 186〜188 1 7 5 1 14(23.3)
23〜25 14 3 3 20(33.3) 186〜188 3 9 9 1 22(36.7)
19〜22 5 5(8.3) 186〜188 7 5 4 16(26.7)
37 12 11 60 10 15 21 9 5 60
(%) 61.7 20.0 18.3 (%) 16.7 25.0 35.0 15.0 8.3
49 11 60
表1.全選手の年齢と最終学歴 表2.全選手の身長と体重

2.U-K(クレペリン)法

(1)全対象者

1)人柄・精神健康度からみた特徴
 表3は全選手64名の人柄10類型と精神健康度における分布を示したものである。分裂型が最も多く、次いで、粘着型じっくり型の順であった。男子バドミントン日本リーグ1部所属選手は、自分の性にあったことに打ち込み徹底してやり遂げる名人肌・職人肌の分裂型を中心に、堅実でコツコツと粘り抜く粘着型や確実慎重にやり抜くじっくり型が多く、自分の世界をもっており、堅実・確実・慎重といった地味な行動傾向を示していた。次に、精神健康度分布をみてみると中上度以上の選手が6割を占めている。これらは、他のスポーツでもすでに証明されており、実力の高さ・低さには心の健康状態が関係し、スポーツ種目を越えて、精神的健康水準の高い選手が上位を占める傾向にあることと一致した。

人柄10類型\精神健康度 中上 中下 計(%)
8 分裂型 4 11 9 2 1 27(42.2)
10 粘着型 2 2 4 8(12.5)
3-1d じっくり型 2 4 6(9.4)
3-2 温和型 3 1 4(6.3)
7 内的安定型 2 2 4(6.3)
5 地道粘り型 1 2 3(4.7)
6 あっさり実行 1 1 1 3(4.7)
9 自己顕示型 1 1 1 3(4.7)
1 おだやか型 2 2(3.1)
2 神経質型 2 2(3.1)
3-1 朗らか型 1 1(1.6)
4 強気敢行型 1(1.6)
計(%) 11(17.2) 28(43.7) 19(29.7) 4(6.3) 2(3.1) 64
表3.人柄別精神健康度

 2)平均曲線からみた特徴
図2
 図2は全選手と健常者の平均曲線を比較したものである。作業水準の違いが明らかであり、男子バドミントン競技選手の心的機能水準の高さが認められた。前期作業の湾曲は適応の柔軟性を表し、前期・後期ともに終末部に上昇がみられ最後まで粘り抜く特徴を示している。また、健康度指標の最も信頼性の高い後期増加率、いわゆる休憩効果は13.6と高い値を示しており、精神的健康水準の高い集団である。

(2)シングルス・ダブルス別特徴

 バドミントン競技は、大きくシングルスとダブルスに分類できる。そこで、全選手を以下の基準によりシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーに分類した。分類基準は次の通りである。
@全日本総合大会・全日本社会人大会・全日本学生大会・全国高校総合大会の4大会を参考大会とし、過去の戦績をシングルス・ダブルス別に分ける。
A全日本総合大会を上位大会とし、全国高校総合大会を下位大会とする。
B上位大会での戦績を取り上げる。また、全日本総合大会での戦績を参考に実力区分を3群に分けた。優勝経験のある選手を上位群、入賞経験者(2位・3位)を中位群、ベスト8・16の選手を下位群とした。

1)人柄からみた特徴
 シングルスとダブルスともに名人肌で職人気質の分裂型を含む個性派が多かった。また、とりつきは良いが気力不足になりやすいあっさり実行型などの元気派は出現率が低く、下表よりシングルスとダブルスに関係なく実力上位になるほど個性派が多く出現した。

2)精神健康度からみた特徴
 シングルスにおいて上位群に中下度以下の該当者がいなかった。ダブルスにおいて高度に該当者がいないものの中上度が多く、低度には出現しなかった。しかし、上位群と中位群+下位群の間に差は認められなかった。

3)曲線経過からみた特徴
 表4は曲線経過別実力水準の分布を示したものである。曲線経過において上昇曲線は心的興奮現象を示すとともに、スポーツ場面では意欲や気力の現れを意味し、下降曲線は疲労傾向としてばかりでなく意欲の減退、持久性の衰退を表す。シングルスにおいては上位群になるにつれ曲線経過が上昇していく傾向がみられたが、ダブルスにおいてはその傾向はみられなかった。シングルスでは、より直接的に個人の意欲・気力が勝敗に結びつくためその結果が顕著に表れたものと考えられる。

シングルス ダブルス
曲線傾向 上位群 中位群+下位群 計(%) 上位群 中位群+下位群 計(%)
上昇 5(83.3) 3(27.3) 8(47.1) 4(57.1) 9(31.0) 13(36.1)
平坦+下降 1(16.7) 8(72.7) 9(52.9) 3(32.9) 20(69.0) 23(63.9)
6 11 17 7 29 36
表4.シングルス、ダブルスの曲線経過と術力水準

図3 図4
4)平均曲線からみた実力水準別特徴
 全選手をシングルスとダブルス別に分けた平均曲線を2群間の曲線経過を比較する基準の視点をもつために、全選手の前期作業第一行目の平均値にそろえた修正曲線から、曲線経過をみると2曲線ともほぼ同傾向を示しており、前期作業の7分目からの上昇は興奮の強さで意欲水準の高さを示している。後期作業は、下降傾向を示すが、終末部に上昇がみられ粘り強いことが分かる。
 実力水準別にシングルスとダブルスについてみたのが図3図4である。シングルスの図3を見ると、初頭からの下降傾向が上位群は小さく、下位群は大きいことが分かる。ダブルス図4からみると、シングルスと同様の結果が示された。つまり、前期作業において上位群は初頭からの湾曲が小さく尻上がりに上昇していく傾向がある。しかし、下位群に移るにつれ、湾曲が大きくなり上昇に至るまでの時間経過が長いことが分かる。後期作業においては、上位群は平坦傾向を示すのに対し下位群になるにつれ下降傾向が強くなっている。これらのことから、上位群は取りつきは遅いが意欲的で、粘り強さと情意の安定性を兼ね備えていることを示している。一方、下位群になるにつれ取り付きが良く柔軟性を持っているが、気力不足になりがちであると見なすことができる。
図5
 図5はシングルス上位群とダブルス上位群を比較した曲線を表したものである。ともに前期作業は上昇、後期作業は平坦の曲線傾向を示している。しかし、適応力を示す1行目の出方がシングルスの方がよく、柔軟性を示す前期作業の湾曲も認められ、休憩効果がより高い値を示している。これは、シングルスとダブルスの競技スタイルの違いからくると考えられる。シングルスは文字通り1対1の勝負であり、頼れるものは自分しかいない。そこでは自分で自分を奮い立たせ臨機応変かつ柔軟に対処していかなければならない。その自己発揚経験が曲線上の違いになって現れたのであろう。それに比べダブルスは、パートナーが存在し互いのプレーを生かしつつ戦っていかなければいけない。そこでとりつきが遅くあまりペースを変えないが、徐々に調子を上げていく特徴が表れたとみることができる。

3.Y-G法

(1)全対象者の特徴

 表5は類型別分布を表したものである。表をみると5類型間に差が認められ、D類が最も多く、A類、B類の順であった。一般的に運動選手集団にはD型の出現率が高く、明るく爽やかなスポーツマン的性格の論拠にあげられており、他種目と同様にスポーツ選手一般の外向的意識特徴を代表している集団である。

図6
A類 B類 C類 D類 E類
11 9 8 22 5 55
(20.0) (16.4) (14.6) (40.0) (9.1)
表5

 Y-G法はその性格の比較的安定した素質的側面ばかりでなく、一定期間内の精神状態によって変わりうる表層的性格側面をとらえている。したがって、いかなる性格類型のものといえども、気分が明るく意欲的で情緒が安定していればD型に傾きやすく、逆に気分が暗く意気消沈していればE型に傾きやすい。そこで、12尺度別平均得点によって平均プロフィールに表したものが図6である。D型に象徴されるやや右下がりの形状を示していており、バドミントン選手は、悲観的に考え込まないスポーツマンタイプ一般の性質を持つ傾向があるといえる。

(2)シングルス・ダブルス別特徴

 シングルスとダブルス別の分布からみると、D類の出現率がシングルスとダブルスともに一番高かった。シングルスではC類が全く出現しなかった。一般にD型がスポーツマンタイプの特徴を表すといわれるが、トップレベルの選手においてはB型が多出する研究結果があり、外向的な点で共通するD類とB類を合わせ、その他の類型と比較したものが下表である。これをみるとシングルスとダブルス間に差が認められ、シングルスがダブルスに比べより社会的外向を示した。シングルスとダブルス別の平均プロフィールからみると、O:客観性がないこと、R:のんきに差が認められ、シングルスの選手はダブルスの選手に比べ主観的で楽観的な性格傾向を示している。


W.まとめ

本研究は、バドミントン競技における第一線級の日本リーグ1部所属選手を対象に、シングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの違いを心理的側面からとらえ、精神的適性条件を明らかにすることを目的とした。その結果、以下の3点が明らかになった。
@男子バドミントン選手は分裂型が多く、精神的健康水準が高いこと。
Aダブルスに比べてシングルスの上位群は適応力と柔軟性に富んでいること。
B意識特徴に差が認められ、シングルスの選手はダブルスの選手に比べ主観性が強く、楽天的であること。
 日本国内におけるトップレベルを対象としたバドミントン選手の特徴は以上の通りである。健康な精神に裏づけされた適応の良さと柔軟性をもち、我の強さとのんきを兼ね備えたシングルス選手、同様に高能率・高健康を示しながらパートナーシップに依存して意志発動の遅さが顕著なダブルス選手の特徴が明らかになった。
 世界的水準にあるバドミントン選手は、シングルスとダブルスをかけもつことはない。そこでは、シングルスとダブルスは違うものであり、より専門的に競技力向上をはかる努力が行われている。しかし、日本ではシングルスが強ければダブルスもできるといった考え方が強く、それぞれの独自性を考えに入れていない。日本の男子バドミントンが世界に羽ばたくためにはシングルスプレーヤーとダブルスプレーヤーの精神的特徴の違いを認識するとともに、世界の第一線級選手のデータから解を求める必要がある。世界のデータと比較することによりシングルスとダブルスの精神的側面からみた適性が浮き彫りにされてくるであろう。そのためには、さらなるデータの蓄積が必要であり、精神的適性条件を世界に求める研究が急務となろう。

簡単解説
バドミントンの上位入賞者の傾向としては、分裂型が最も多く、この性格は極端にいえば自分がよければそれでいいという性格です。つまり、相手を気にせず自分の世界を作れる人でしょうか。オタクに近いのかな..。
しかし精神健康度はかなり高い水準にあります。また、優勝者という上位群は適応力と柔軟性に富んでいるということでした。壁にぶつかっても精神的にうまく乗り切れるのでしょう。
健康な精神に裏づけされた適応の良さと柔軟性をもち、我の強さとのんきを兼ね備えたシングルス選手、同様に高能率・高健康を示しながらパートナーシップに依存して意志発動の遅さが顕著なダブルス選手の特徴が明らかになりました。






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