
シャトルと相手を「2つの目」で捉えること
人の目には、物の形や色を正確に認識する「中心視」と形よりも明暗や動きを認識する「周辺視」という2つの働きがあります。文字を読む時には中心視、ぼんやりと景色を見ている時は周辺視を使っているのです。バドミントンにおいても両方の「目の使い方」が大切です。
シャトルがラケットが交わるのはある1点であり、また、ラケットのスウィートスポットは非常に狭いものとなっています。したがって、シャトルを返球する時は中心視によって正確にラケット中央で、しかも意図する球速を打つことのできるタイミングでシャトルをインパクトし、予想外の返球を極力少なくする必要があります。コントロールされた打球からはラリーのイメージが良くなり、戦術にも大きく影響を及ぼします。
もう一つの周辺視は、相手の気配を感じるために使われなければなりません。シャトルをインパクトするまでに相手が先読みをして動き出している場合など、その場所へ打つとしても相手のタイミングや待ちを外さなければなりません。シャトルを中心視しながらも、相手の気配を周辺視で感じなければならないのです。宮元武蔵の『五輪書』では、中心視を「見の目」、周辺視を「観の目」と呼んでいます。

ラケットをコントロールする

シャトルを正確に捉えるためには、ラケットのインパクト面を正確にコントロールする必要があります。そのために
フットワークでも説明していますが、上半身は脱力が実現されていなければなりません。
ウォーミングアップ等によって上肢に重みを感じるようになるまで手関節、肘関節、肩関節を緩め、ラケットの動きを各関節で敏感に感じ取る必要があります。人の関節は意識すれば素晴らしい運動を行ってくれます。緩めることで本来の能力を発揮することができるのです。
ラケットにシャトルが当たる時(コルクの次に羽が当たるセカンドコンタクト時、両方が同時に当たるサイマルテニアスコンタクト時の場合)、フレームに羽が当たらない範囲(赤の部分)は意外と狭いのです。(ヘアピンなどコルクだけへ接触の場合はその限りではありません)

インパクト時の肩関節
肩関節位置を固定するのは、大きな筋肉ではなくインナーマッスルと呼ばれる内部の方にある筋肉です。上肢挙上に関わるインナーマッスルは、棘下筋・棘上筋・肩甲下筋の3つです。この3つに筋力差が生じないよう
トレーニングが必要です。
この3つのインナーマッスルの張力が均等かつ最小で、最も安定する位置は、屈曲位30°(棘延長上のスカピュラプレーン内)で、挙上が水平よりも0°~20°の
「ゼロポジション」と呼ばれる場所です。この時に肩関節は最も強い運動を引き起こすことができます。

上肢・脊柱の運動

スイング時の上肢の運動は、肘伸展や手掌屈運動(いわゆるリスト)を主に行うのではなく、前腕の回内、上腕の内旋運動を行います。軸回転運動でインパクトするので肘関節と手首関節(リストスタンド)は角度を保持する必要があり、その角度は90°~110°が理想といわれています。
また、脊柱は左の軸回転を行います。この軸回転で右肘を前方に押し出す運動を行い、肘→手首→ラケットヘッドの順で前方へ出て行きます。
逆に、肘伸展、手掌屈(いわゆるリスト)でインパクトを行うと、肩関節の伸展(腕を上から下に下げる)で打たなくてはなりません。そうなると脊柱の軸回転ではなく、腹筋で打つようなイメージの体前屈を使うことになってしまいます。これではインパクト後、バランスを回復するまでに時間がかかりすぎ、また、視線のブレによるシャトルの見失いが起こってしまい、次の反応が遅くなってしまいます。脊柱の軸回転運動は、視線のブレを防ぎ、次へのバランス回復を容易にするため、ラリーのイメージ作りに良い方向に働きます。インパクト後のフォームバランスから脊柱の軸回転運動を自分で評価しましょう。

バックハンド側では、前腕の回外、上腕の外旋運動でインパクトします。この場合も軸回転運動を行うので、肘関節と手関節(リストスタンド)は90°~110°を保持することが重要です。
逆に肘伸展と手背屈(手の甲側に曲げる)でインパクトする場合、肘伸展位の限界(伸びきった状態)があるため、相手のスピードあるショットに間に合わず打ち出すコースが限定されてしまうおそれがあります。

左右のバランス

ほとんどの人は利き手にラケットを持ってプレーすると思います。しかし、あまり意識されていないのが利き手と逆の手の役割です。人の体は左右でバランスを保てるようにできています。シャトルに追いつけなかったり、打ち出す、または打ち出した後にバランスが崩れたりするのは、もしかすると左手によるバランス保持ができていないのかもしれません。
ラケット側の肘を後ろに大きく引くことをラギングバックと言いますが、できるだけ大きく、そして肘は肩と同じか高め(90°~110°)に位置させるのが理想です。

自分のフォームを作る
人それぞれ、体格や筋力、筋の質は違います。しかし、「力み」をとるように「緩める」ことができれば、誰でも本来の能力を使うことができます。まず、シャトルを打つ前にウォーミングアップなどでどれだけ関節を緩めることができたかを評価(重みの感じ具合)し、好きなショットを選び、一点から一点に打ち出す練習を徹底的にこなしましょう。そこで、前後左右のショットのズレを体の部位の位置、関節角度、動作のタイミング等を修正しながらフォームを作り上げていきます。一点に打ち出すことが徹底できれば、他のショットへの応用も要領がわかってきます。
ミス(エラー)には必ず原因が存在します。偶然ではないことを受け入れ練習を積み重ねなければなりません。また、前述したように人それぞれにあったフォームは必ず存在するものですが、禅で使われる『無常』という言葉があるように、いつまでも同じではなく時間と共に変化するものです。毎日自分のフォームを意識することができれば、いつでも「何かが変化している状態」を受け入れることができます。

道具を軽く扱う

現在のバドミントンは以前と比べても、道具の性能向上や技術の進歩で素早い反応が求められます。筋力を上げてスピードを補うのも一つの方法ですが、効率よく動かすことができれば、筋出力も少なくバランスも回復しやすくなります。
図はラケットの動かし方ですが、支点をどこに持ってくるかでラケットヘッドスピードに差が出てきます。場合によってはラケットの重心部分を支点として動かす(他者中心的運動:センター・体軸・正中線、高岡英夫より)ことで最も速いヘッドスピードを得ることができます。

右利きバックハンドストローク時の上肢からラケットまでの運動を表現してみました。左はひとつの棒として運動するためヘッドスピードは遅いです。中央の鞭運動では、肘を支点として運動するので、棒運動よりはヘッドスピードが上がります。右は、肘主導で運動しますが、上腕を打ち出し方向と逆に動かすこと(他者中心的運動)で前腕部に支点を置き(上肢からラケット間での重心と予想される)、さらにヘッドスピードを上げています。ラケットはもちろん道具ですが、この場合は前腕という身体の一部も道具のように軽く扱っているわけです。

ラケットの握り方
ラケットの握り方は、イースタングリップ(縦に持つ)だとフォアハンド側、バックハンド側両方へ対応がしやすくなります。また、フォアハンドドライブの場合には、ウエスタン(フライパン持ち)気味に持ったり、バックハンドのサムアップ時には、逆にイースタンよりも、もっと奥に回して握ることもあります。大切なことは、いつでも臨機応変に対応できるよう、強く握り締めずに軽く握手をするような感じで握る事が大切です。
 |
 |
 |
|
イースタングリップ |
|
|
 |
|
| 軽く握っているので、わずかに隙間ができます |